広報オンライン(アーカイブ)
August 19, 2021
「展示」
▼人間関係に係る図書館展示「大学生に読んでほしい本」のアーカイブです。
⑧2020年度 藤原勇先生
・『100万回生きたねこ』
紹介文:
印象に残ったセリフ:「ねこは もう,けっして 生きかえりませんでした」(絵本の最後のセリフです)ある1匹のとらねこが100万回の生死を繰り返す話。その中でどのように生き、何を感じたのか。私が大学院生のとき、ゼミの仲間から薦められた絵本。初めは「良い絵本だ」ぐらいの感想だったが、ふと思い出して読み返すと、そのときの心情で受け止め方がまるで違う。死生学のように深く読み解くも良し、単純に物語として感動するも良し。今、読んでみて、果たして何を感じるか・・...
-----
⑦2019年度 木戸功先生
・『断片的なものの社会学』
いまもっとも活躍されている社会学者のひとり岸さんの本の中からこれを紹介します。誰もが他者とともに社会の中で生きているのだけれども、その他者を完全に理解することはできないのだということを、わたしは社会学の授業で藤子・F・不二雄さんの漫画なども題材にしながら述べます。でもそこから導かれるの他者理解へのは絶望ではなく、だからこそ少しでも深く理解しようという希望なのだと思います。おすすめです。
・『リヴァイアサン』
著者の作品はどれもおすすめですが、今回は『リヴァイアサン』を紹介します。15年くらい前に読み、あまりにも面白かったのでいろんな人に貸して戻ってきた文庫版がいま手元にあります。誰かのハワイ出張の共として海を渡り、わたしの北海道赴任によって札幌へも行き、当地で知り合った友人にも貸し出し、つい先日札幌から東京に戻ってきました。内容もさることながら、この本自体にまつわるエピソードが豊富な1冊です。
・『魂のゆくえ』
わたしは音楽が大好きで、聴くだけではなくて自分で楽器を演奏したりもします。大学生の頃、それまで以上にさまざまなジャンルの音楽を聴くようにようになりましたが、なぜか黒人音楽は不得手でした。そんななか本書を読んで一気に親密さを感じるようになったという忘れられない1冊です。これを読んでジャズの発祥の地ともいわれるニューオリンズのセカンド・ラインといわれるジャンルにすっかりハマることになりました。
・『箱舟はいっぱい』
作者はコンビで描かれていた藤子不二雄さんのうち『ドラえもん』などを描かれた方です。かれらは少年漫画以外にも、大人向けの作品をたくさん描いておられて作品集がいくつか刊行されています。これは「異色短編集」と題された4巻もののシリーズの第3巻にあたります。この『箱舟はいっぱい』にはわたしが社会学の入門的な授業で教材として使っているちょっとシュールなSF「どことなく なんとなく」が収められています。
・『言葉とは何か』
大学生のころ、30年くらい前になりますが著者のファンでした。構造主義言語学の祖ソシュールの研究で名高い著者の『ソシュールの思想』(岩波書店)をずいぶん時間をかけて、それでもなんとか読了しました。事物がありその名称としての言葉があるのではなく、誤解をおそれずに端的にいうならば、言葉が事物を、そしてそれら事物たちからなる現実をつくりだしているのであるというアイデアに初めて出会ったのが著者の著作でした。
・『バッタを倒しにアフリカへ』
「サバクトビバッタはアフリカで数年に1度大発生し、農作物に大きな被害を与えています。 私はこのバッタの研究者なのに、人工的な研究室で飼育実験ばかりしており、野生の姿を見たことがなかった。自然界でのバッタを観察したいという気持ちもありました」。アフリカのモーリタニアでのバッタの研究にも惹かれましたが、研究職を目指す著者が粘り強く課題をクリアしていく様子がリアルに描かれていて一気に読んでしまいました。
・『経済原論』
わたしが大学生だったのは1990年前後ですが、経済学の講義には「近代経済学」と「マルクス経済学」があり、それぞれ「近経」「マル経」とよばれておりました。「マル経」をとってると就活で企業に敬遠されるからやめといた方がよいということがまことしやかに語られていた時代ですが、本当だったのでしょうか。マルクスの『資本論』の批判的読解にもとづいて形づくられた宇野経済理論の入門書なのですが、終始一貫して難解なテキストです。数年前に文庫化されたことを知り、購入して読みましたが、たいへん勉強にもなり、もっと若い時にきちんと読んでおけばよかったなと思いました。
・『告白』
先日(3月7日)朝日新聞に掲載された識者120人が選んだ平成の30冊で第3位となった作品。村上春樹とカズオ・イシグロに次ぐ順位にやや興奮を覚えました。ミュージシャンでもある著者の作品は昔から好きで、小説だけでなくエッセイもとても面白いです。この作品は明治時代におきた「河内十人斬り」とよばれる殺人事件を題材にしながら展開される時代劇のようなお話です。著者の作品はどれもオススメですが、最近刊行された『ギケイキ』や『宇治拾遺物語』の現代語訳による「こぶとりじいさん」も楽しく読めます。
・『1Q84』
平成の30冊(朝日新聞)にて第1位となった作品。特有の文体や性描写などにより好き嫌いが別れるようですが、わたしは10代の頃からファンでした。物語の時代設定は1980年代、昭和の終わり頃ですが、読んでいると1990年代の平成の初めの頃の時代状況を思い起こします。バブルが崩壊し、震災もあり、カルト教団によるテロ事件もあり、なんとなく殺伐とした時代でした。できるだけ文庫版が刊行されるまで待って読むことにしていたので、文庫化されたときにはようやく読めると思って一気に読んでしまったのですが、著者の新作をリアルタイムで読む機会は今後は多くないだろうなとあるとき思い、以来、文庫になる前に購入して読んでしまっています。
⑥2018年度 木戸功先生
「サバクトビバッタはアフリカで数年に1度大発生し、農作物に大きな被害を与えています。 私はこのバッタの研究者なのに、人工的な研究室で飼育実験ばかりしており、野生の姿を見た
ことがなかった。自然界でのバッタを観察したいという気持ちもありました」。アフリカのモー
リタニアでのバッタの研究にも惹かれましたが、研究職を目指す著者が粘り強く課題をクリア
していく様子がリアルに描かれていて一気に読んでしまいました。
⑤2017年度 高木秀明先生
・『人生論ノート』
私が大学に入り、心理学を学ぶ中で読んだ1冊です。「死について」から「個性について」まで23のテーマについて書かれています。「我々は我々の愛するものに対して、自分が幸福であることよりなお以上の善いことを為しうるであろうか。」(「幸福について」より)や「偽善が他の人を破滅させるのは、偽善そのものによってよりも、そのうちに含まれる阿諛によってである。」(「偽善について」より)など、含蓄の深い言葉が続々と出てきます。
④2016年度 推薦なし
③2015年度 大橋正明先生
・『戦争の現場で考えた空爆、占領、難民』
間もなく18歳から選挙権が与えられる。つまり大学生になるとは、責任ある大人になることを意味する。それ故大学生も、日本が諸国とどの様な関係を保つべきかを、真剣に考えてほしい。この本は、空爆や占領、難民は遠い外国の出来事ではなく身近な出来事であることを著者自身の経験として伝え、日本の今後の方向性を真剣に考えることを若い人たちに求めている。そのためこの本の表紙イラストは、現役大学生の作品である。
②2014年度 大槻奈巳先生
・『大学生のためのキャリアデザイン入門』
みなさんは、大学を卒業して社会に出て働くことに漠然とした不安を持っていませんか。就職活動で内定を得られるか心配で、就職活動への準備をなにかしなくてはと思い、その一方で、やりがいのある仕事につきたい、自分にあった仕事につきたいと思っていませんか。
就職活動で内定を得ることはゴールではありません。人生をどう生きていくかを考える中で、就職があり、働くことがあります。また、自分がやりがいを持って働きたい、自分にあった仕事をしたいと考えても、社会の中の自分、社会と自分の関係を考える必要があります。限定的な知識やイメージをもとに自分にあった仕事といってもそれは幻想です。社会のなかで自分がどこでどのように必要とされているのかを考える必要があります。
本書は、大学生がこれからどのように生きていくかを、仕事や働くということを通して、自分と社会の関係を見据えながら考えてほしいと思って執筆・編集しました。みなさんが自分のやりたい方向にどうやって自分を持っていくことができるのかを考える一助にしてほしいと思っています。
①2013年度 鈴木乙史先生
・『死を見つめる心』
この本を神田の古本屋の100円均一で見つけた時の喜びを今でも覚えている。岸本は宗教学者であり、東大教授として米国へ招聘される際の健康診断で末期ガンが発見され、余命6ヶ月を宣告される。死を見つめざるを得ない宗教学者が、どのように生きたか(実際に死に向き合いながら10年間を生きることになる)。本書は、人間の生き死にに関心がある者にとっての必読書ではないかと、私は思っている。