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(日文)図書館展示「大学生に読んでほしい本」アーカイブ

⑩2022年度 大塚美保先生(2回目)

・『ヴェネツィアの宿

・『遠来の客たち

紹介文:

須賀敦子と曾野綾子は創立当初の聖心女子大学で学び、すばらしい書き手となりました。須賀の『ヴェネツィアの宿』の中のエッセイ「寄宿学校」は、大勢の外国人修道女が教えていた終戦後の聖心女子学院のようすを伝えています。

曾野の小説「遠来の客たち」は聖心女子大学在学中に書かれました。占領軍のアメリカ兵と英語で対等にわたりあう女子学生ナミコが主人公。曾野の出世作です。

いずれも皆さんの先輩が残した名品です。

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⑨2021年度 小柳智一先生(2回目)

・『これで古典がよくわかる

紹介文:

日本の古典文学の歴史を「お勉強」でなく、読み物として楽しめます。物語のあらすじ紹介ではありません。その作品が現代の日本語にとってどんな意味を持つかを説明します。ひらがなで「むかしおとこありけり」と書くのと、カタカナで「ユク河ノナガレハ絶エズシテ」と書くのは何が違うのか? 「和歌」は一体どこがすごいのか? 『枕草子』と『徒然草』の根本的な違いは? 〈古典文学について考えること〉が面白いと思える本です。

 

・『否定と肯定 : ホロコーストの真実をめぐる闘い

紹介文:

ホロコースト研究の歴史学者が、歴史捏造主義者に名誉毀損で訴えられた裁判の過程を綴った回想録です。過去を勝手に歪め捏造する精神の卑劣さと、事実の誠実な検証以外に歴史を知る方法がないことを教えてくれます。他人の意見を無反省に自分の意見だと思い込むカラッポな人間にならないために、現実との向き合い方を真剣に考えてほしいと思います。難しい本ではありません。映画化されたほどスリリング、徹夜覚悟で手に取ってください。

 

・『11 : eleven

紹介文:

11編の小説からなる短編集で、それがそのまま書名になっています。巻頭の「五色の舟」は一種のSFで、発表当時から評価の高かった傑作。戦時に見世物小屋一座が「くだん」という人面牛の怪物を買いに出かける、という奇妙な設定ですが、文章はわかりやすく、イメージは鮮明です。それでいて、人間とは何か、差別とは何か、世界とは何か、認識とは何か、考えさせるテーマを内在しています。近藤ようこの漫画化作品もお薦めです。

 

・『ウィトゲンシュタイン入門

紹介文:

ウィトゲンシュタインは20世紀最大の哲学者の1人です。言葉を使って考えるとはどういうことか?を徹底的に考え、その考えを追いかけるのはドキドキするほど刺激的ですが、最初はガイドがないと迷子になると思います。まずはこの1冊をお薦めします。ところで、考え抜いた末の言葉「語りえぬものについては、沈黙しなければならない」を、どう思われますか。これは前期の思考の最後の言葉で、後期の思考はここから再出発してさらに……

 

・『言語が違えば、世界も違って見えるわけ

紹介文:

人間は言語を通して世界を捉え表現します。それなら、言語が違えば世界の捉え方も違うのでは? でも、外国語を話す人と日本語を話す私たちは話が通じるじゃないか、これはどういうこと? 少し難しく言うと「言語の相対性と普遍性」の問題です。この問題を深く面白く解説するのがこの本です。目次を少々。「虹の名前 ホメロスの描く空が青くないわけ」「女性名詞の「スプーン」は女らしい? 言語の性別は思考にどう影響するか」

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⑧2020年度 川津誠先生

紹介文:

何でも良いのです。興味を持てるものであれば。まず手に取ることが第一。

読むこと、は大学生の一番の仕事なのですから。

たとえば、

源氏物語』。『奥の細道』(松尾芭蕉)。『明暗』(夏目漱石)。『渋江抽斎』(森鷗外)。『暗夜行路』(志賀直哉)。『細雪』(谷崎潤一郎)。『砂の女』(安部公房)。

燃えあがる緑の木」(大江健三郎)。『ノルウェイの森』(村上春樹)。・・・・・・

罪と罰』(ドストエフスキー)。『谷間の百合』(バルザック)。『ボヴァリー夫人』フローベール)。『ヴェニスに死す』(トーマス・マン)・・・・・・

いくらでも名前を上げる事ができます。小説ばかりを挙げましたが。

自分で手に取った本が面白いかどうかは、半分は中身のせいですが、半分は読み手である自分のせいです。読んで面白いと思うための準備を自分が何もしていないこと。どう読めば良いのか分かっていないこと。実は、それは教わって分かることと言うより、読み続けることによって、自分の中に作られてくるものだ、と言えます。

自分で時間を作って読むこと。できれば、読み終わった後で、5分でも良い、読んだ内容を繰り返してみること。そうすることで、読んだ中身が自分の中により強く意味づけられるでしょう。そうすることで、自分の中の読書体験が系統づけられる道ができます。

初めは読み飛ばしても良い。少しずつでも、読んだ後に振り返る時間を持つようにしていくことができれば、読書は格段に意義深くなるはず。

映画や音楽のことを友達と話すように、昨日読んだ本について友達と盛り上がれる。そんな時間があれば良い、と思います。繰り返しますが、読書は、大学生の仕事なのですから。

たとえば、

与謝野晶子『みだれ髪

俵万智『サラダ記念日

いずれも歌集です。

「そのこはたち櫛に流るる黒髪のおごりの春の美しきかな」(『みだれ髪』)

「嫁さんになれよだなんてカンチュウハイ二本で言ってしまっていいの」(『サラダ記念日』)

すべての歌がそうだなどとは言いませんが、女性が女性であることによって社会でどのような思いをするか。しなければならないか。女性の心の中にはどのような表現されるべき言葉があるか。そういった、語られなかった言葉を、五七五七七と言う日本古来の形に乗せて、鮮やかに表現して見せた。ことに晶子の『みだれ髪』は、男性中心の社会に女性の女性としての情熱という刃を突きつけたものでした。俵万智の『サラダ記念日』の時代は20世紀の終わり近く、晶子から90年近い時間を経ています。女性の権利が主張されるようになって、女性の社会進出が少しずつ当たりまえにはなっていた頃です。しかし逆に、晶子から100年近く経ってもこの日本社会はさして変わっていなかったのではないか、男達はさして学習してこなかったのではないか、と思わせます。

あるいは。

宮本百合子『伸子

野上弥生子『真知子

林芙美子『放浪記

佐多稲子『くれなゐ

大正末から昭和初期、日本がプロレタリア運動への弾圧から大陸進出、太平洋戦争と言う、明治以降の国家の経営戦略の終焉、崩壊へ向けて歩みを続けていた頃の女性達の小説です。

すべて、男達との関わりの中で、女性としての主人公の生き方をこの時代背景の中に置き、いかに彼女たちが自身の生き方を精一杯追求しようとしていたか、が描き出されています。

このようにして女性達は生きてきた。生きねばならなかった。その生を貫いた女性としてのエネルギーの熱さを、改めて今、感じ取ってほしいと思います。それは、現代社会に置かれた女性達の立場にも共通する問題だと言えるはずです。

そして。

円地文子『女坂

有吉佐和子『紀ノ川

『女坂』が昭和24年、『紀ノ川』が34年の作品です。戦争が終わって女性解放がそれまでになく進んだ頃、明治大正昭和という時代の変遷を、生き抜いた女達の姿を、世代が受け継がれていく形の中で描き出した小説です。女性達が時間の流れの中で、どのように虐げられ、男性中心の社会に翻弄されてきたか、しかしまた、その中でいかに女性達は女性としての生き方を求め、女性である事の意味を世代を超えて受け継ぎ考え続けてきたのか。そういったことを考えさせます。

これらはみんな、女性達の姿を社会の中で炙り出すことによって、男社会なるものがいかにいびつであるか、をあからさまにします。それは、男達にその事実を、男達があぐらを掻いてきた社会の在り方の欺瞞を突きつけてくるものなのですが、同時に、女性達に、自らの生を社会の中において真剣に考えねばならないのだと言うことを、女である事の意味を考えることを改めて突きつけ、要求してくるものでもあります。まさに今、あなたたちがあなたたちの年齢で読むべきもの、です。

残念ながら、これらは書店に行けばすぐに、文庫の棚に探し出せる、と言うものばかりではありません。全集で探すしかないものもあります。であれば、皆さんの手もとにこれらの書を置くためには、図書館を利用するのがもっとも簡便な方法、と云う事になります。これらの書ばかりではありません。多くの書が、図書館という空間でなければ読みたい者の手に届かないそんな社会になってしまっています。せっせと、図書館と仲良くなること、が大学生の仕事としての〈読書〉を充実したものにするのには必要なのです。

自分で手に取った本が面白いかどうかは、半分は中身のせいですが、半分は読み手である自分のせいです。読んで面白いと思うための準備を自分が何もしていないこと。どう読めば良いのか分かっていないこと。実は、それは教わって分かることと言うより、読み続けることによって、自分の中に作られてくるものだ、と言えます。

自分で時間を作って読むこと。できれば、読み終わった後で、5分でも良い、読んだ内容を繰り返してみること。そうすることで、読んだ中身が自分の中により強く意味づけられるでしょう。そうすることで、自分の中の読書体験が系統づけられる道ができます。

初めは読み飛ばしても良い。少しずつでも、読んだ後に振り返る時間を持つようにしていくことができれば、ちょっとしんどいかも知れませんが、読書は格段に意義深くなるはず。

映画や音楽のことを友達と話すように、昨日読んだ本について友達と盛り上がれる。そんな時間があれば良い、と思います。

繰り返しますが、読書は、大学生の仕事なのですから。

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⑦2019年度 推薦なし

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⑥2018年度 清水由貴子先生

・『日本語練習帳

紹介文:

大学2年の時、日本語教師という仕事に興味があり、大学の書店で見つけたこの本(当時のベストセラー)を買いました。例えば、「思う」と「考える」の違いは何か、のように一見簡単そうに見えるけどうまく説明できない問題がたくさん載っています。読んでいる最中は母語なのに(だからこそ)うまく説明できないもどかしさを感じますが、解説はとても明快で、最後はすっきりとした気分になれます。皆さんも自分の「日本語力」を試してみませんか?

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⑤2017年度 青島麻子先生

・『東と西の語る日本の歴史

紹介文:

大学入学直後に読んだ本です。地元の友人とのみ過ごしていた高校までとは異なり、大学には様々な地方出身者が集まっており、言語・食事・風習など、種々の違いに直面しました。皆さんも、かつての私と同じく日本人の多様性を意識しだしている時期でしょうか?この本は、「東のイエと西のムラ」「東の弓と馬、西の海と船」「東の畠作、西の水田」…など、歴史を紐解きながら、日本列島の東と西に生きた人々の差異を説き明かしてくれます。

 

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④2016年度 山田進先生

・『ルバイヤート

・『アラブ飲酒詩選

紹介文:

大学に入ってペルシャ語をかじったことがあった。①はその頃に出会ったもの。作者は11・12世紀のペルシャの数学者・天文学者。その唯一の作品が①で、詩人としても知られる。内容は酒を讃える歌がかなりの割合を占める。②はそれからしばらくして出会ったもの。

私は酒が好きだが、学生諸君に必ずしも飲酒をすすめるものではない。しかし、酒というものが人類史上幾多の弾圧にあいながらも生き延びてきたことの「意味」を、これらの著作が教えてくれることだけは保証できる。

なお、『ルバイヤート』には①の他に多くの日本語訳があり、訳された文体もさまざまで、それらを比較しながら読むのも一興。

印象に残っている詩句のある頁。

①オマル・ハイヤーム『ルバイヤート』岩波クラシックス

pp.66-67

②アブー・ヌワース『アラブ飲酒詩選』岩波文庫

pp.72-73

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③2015年度 岩田一成先生

・『日本人の知らない日本語

紹介文:

世界にはいろいろな人がいて、コミュニケーションの方法もさまざまです。日本語教師のおもしろさはそういった異文化体験ができることですが、この本を読んで疑似体験してみませんか。日本語の文法やかなの成り立ちなど、日本語自体への興味も必ず沸いてきますよ。

 

・『まんがクラスメイトは外国人

紹介文:

日本の学校はどんどん多国籍化しています。在日外国人は、英語を話す欧米人ばかりではありません。本当のグローバル人材とは、いろいろな国の人と柔軟にお付き合いができる人のことです。まずはその第一歩として相手のことを理解してみませんか?この本はオススメです。

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②2014年度 小柳智一先生(1回目)

・『シャーロック・ホームズ

紹介文:

世界で最も有名な探偵の物語です。私が最初に読んだのは小学校4年生で、表紙の恐ろしげな犬の絵を見て、妖怪か怪獣の本だと思って読み始めました(第3長編『バスカヴィル家の犬』を子ども向けにリライトしたものと後に知りました)。次々に起こる気味の悪い超常的な事件がすべて人間の仕業であったことを、最後にホームズが説明するのを読んで、とても驚きました。こうだと思い込んでいた姿がガラッと変わる、物の見方は一つでないということを、衝撃をもって知りました。

ホームズの言葉には含蓄があります。有名なものを紹介しましょう。「君は見てはいるが観察はしていない。その差は大きい」(「ボヘミアの醜聞」)、「明白な事実ほど当てにならないものはない」(「ボスコム谷の惨劇」)、「ありえないことを取り除くと、残ったものがどれほどありそうにないことでも、それが真実だ」(「緑柱石の宝冠」)、などなど。常識を捨てずに常識を疑うこと、これは私の研究態度の基本ですが、ホームズから学んだことです。今でも折を見て読み返します。

未読の方は、まずは第1短編集『シャーロック・ホームズの冒険』からどうぞ。ついでに、ホームズを読み終えた方には、チェスタトン『ブラウン神父』シリーズと岡本綺堂『半七捕物帳』シリーズもお薦めします。後者は日本版シャーロック・ホームズです。

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①2013年度 大塚美保先生(1回目)

・『平家物語

紹介文:

大学2年生の時、生まれて初めて古典に読みふける経験をし、通学電車で駅を乗り過ごしました。それほどエキサイティングだったのが『平家物語』。

おかげで、古典文学は読みづらいという苦手意識が払拭されました。

いちばん好きなのは、戦いに敗れ、命運つきた木曽(きそ)義(よし)仲(なか)が、一人だけ残った従者にもらす言葉。

「日来(ひごろ)は何とも覚えぬ鎧(よろい)が、今日は重うなつたるぞや」

涙なしには読めません。

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