図書館長メッセージ「図書館と「お近づき」になってください」
私はこれまでの教員生活を通して、かなり多くの大学の図書館を実際に見てきました。それらの中でも、聖心女子大学の図書館はかなり充実した図書館だと感じています。蔵書はおよそ44万冊だそうですが、それらが長年「文学部」(現在の「現代教養学部」)で利用する書籍を中心にして蒐集されてきたことを考えると、かなりの冊数だといえるでしょう。
東京などでは、町の本屋さんが最近少なくなってしまいましたが、そういうお店に行ってみますと、多くの場合、新刊書ばかりが並んでいます。また昨今、本の通販サイトなどから購入することも多いでしょうけれど、それらでも少しでも古い本はなかなか手に入りません。
しかし大学の図書館は違います。新刊書のなかから選りすぐった書籍を常時買い入れながら、もはや他では見ることのできない古くて貴重な書物も長年にわたり維持・管理しているのです。
皆さんはそのような書籍を手に取り、大学の学問を支える場である図書館を自由に使える権利を得ているのです。利用しない手はありません。たくさんの書物の背表紙を眺め、さらには実際に手に取ってみて、どのような本が学問・研究にふさわしい本であるかを、目で見て覚えてください。ちょうど、美術品や骨董品の目利きになるには、若い頃から、いいものをたくさん見つづけるしかない、というのと同じ理屈で、レポートや卒業論文で使ってよい本というのがどのような本なのかは、そのような訓練を少しずつ続ける以外に知る方法がありません。
また本学の図書館は、蔵書の質と量の充実というだけでない特色ももっています。図書館というのは、書庫が入り組んでいたり奥深かったりするほど、私たちの好奇心をかき立てるものです。私は常々そう考えています。奥へ行けば行くほど、「こんな本があったのか!」と驚くような本と出会えたりするのです。この大学の図書館はその欲求をかなり満たしてくれます。屋根裏のような場所があったり、階段を降りて「地階」と書いてある階に到着すると、そこは大きな窓のある地上だったり…。ついでに言えば、その奥のほうに個人机の置かれた静かなスペースがあって、広尾の町の一角を自分のオフィスにする気分も味わえます。
学期末になって初めて、焦って適当な本を探しに走り込んでも、図書館というところはなかなか真の姿を見せてはくれません。まずは「本の目利きにでもなろうかな」という気分で、落ち着いた空き時間に行って、図書館と「お近づき」になることが一番なのです。
一方、図書館の公式サイトにログインすれば、オンラインで利用できるさまざまに便利な機能もあります。こちらについても、実際の書庫を探検するように、ぜひ時間のあるときに何度も回遊してみてください。
皆さんの通う広尾には東京都立中央図書館もあり、日本でもっとも本を探しやすい立地の大学といっても過言ではありません。どうぞ図書館を有効に活用して、奥深い学問の世界を満喫してください。
図書館長
長野 美香(NAGANO, Mika)
館長への質問
館長略歴
聖心女子大学現代教養学部哲学科 教授
博士(人文科学)
- 研究分野 :
- 日本思想史
- 研究テーマ :
- 宗教思想、特に近代日本におけるキリスト教受容の問題
- 著書 :
- 『倫理学の地図』(共著)(ナカニシヤ書店,2010)
『近世日本の儒教思想―山崎闇斎学派を中心として』(共著)(お茶の水女子大学附属図書館E-bookサービス,2012)
『岩波講座・日本の思想 第1巻「日本」と日本思想』(共著)(岩波書店,2013)